偽王子と、甘い偽恋
⋆ ˖ ⏱︎.ᐟ


 とびきり甘い時間を過ごした、そんな後。

 臣くんの部屋で、彼はぐったりと伸びている私の頭を優しく撫でていた。


「この化け物…!」

「彼氏に向かって吐く言葉なん?それ」


 まさか一回で終わらないなんて、想像もしていなかった。

 夕飯も食べずにこんなことになるなんて。

 乱れた息は、まだ完全には整わない。


「…一週間くらい余裕だって思ってたんだよ」

「え?」

「そしたら、行きの飛行機の中ですでに限界来てた。こんなに人に触れたいって思うようになるなんて、思ってなかったんだよ」


 ほんの少し照れくさそうにそんな言葉を零しながら、彼は私の頭を撫で続けていた。

 そんな彼の顔を覗き込もうとすると、ぐいっと頭を押さえつけられる。


「ちょっと、臣くん…っ…!」

「見んなよ。寝てろ」

「んな、横暴な!」


 枕に顔を埋めながら、臣くんの照れ隠しの行動に耐えていると、ふと「あのさ」と静かな声が降ってきた。


「アメリカに行った時に、また親父が強引に話を進めててさ」

「ん?」

「明日、婚約者が実家の方に来るらしい」

「へ?」


 あまりに急な話に、間の抜けた声が出た。

 確かに、一緒に住み始めてはい、平和、なんてそんなおめでたい話があるわけないと分かってはいたけれど。
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