偽王子と、甘い偽恋
「で、でもさ…」

「私が彼の彼女です。私が彼といつか結婚するんですって顔して、隣に立っとけよ」


 そう強気に言ってくるけれど、彼は一体どのくらい、私との未来を真剣に考えてくれているのだろう。

 あの記者会見の後から、未来のことについて深く聞いたり、話し合ったりするタイミングは一度もなかった。それなのに、今こうして彼は結婚を匂わせるような言葉を口にする。私たち、まだ付き合いがそれほど長いわけでもないのに。

 生まれて初めての恋愛をしている私だけれど、これだけで浮かれすぎて、判断を早まってはいけないということくらいは分かっている。

 王子様との恋愛を夢見ていた私にとって、臣くんにそう言われるのは、もちろん堪らなく嬉しい。だけど、客観的に見て臣くんが結婚を急ぎたいタイプにはどうしても見えなかった。

 今まで散々遊んで、数えきれないほどの女性を見てきた彼だ。本当に、私との未来を遠い先まで見据えてくれているのだろうか。

 答えに詰まって黙り込む私に、臣くんは眉を顰めながら、軽く小首を傾げた。


「何、嫌とか言う?」

「違う、違うけどさ…」


 今、こんなことを聞いたら重い?
 彼はちゃんと、真剣に答えてくれる?

 どう切り出せばいいか分からず悩んでいると、テーブルに置いていた彼のスマートフォンが、着信メロディーを歌い出す。

 それを耳にするなり、臣くんは私の頭を一度だけポンと撫で、そのまま体を引き離した。
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