偽王子と、甘い偽恋
「はい、今行きます」


 スマートフォンを耳に当てるなり、それだけ告げて電話を切る。


「車着いたって。行ってくる」

「…うん」


 そんな煮え切らない返事をする私に、臣くんは少しだけ口角を上げた。
 再び近寄ってくると、両手で私の頬を包み込むように持ち上げる。


「そんな不安そうな顔すんなら行こ」

「…でも」

「おいで。本物の姫になりに行こ」


 そんな、臣くんらしからぬ気障《きざ》で臭いセリフ。
 違和感はあるのに、彼の言葉に従ってしまう私がいた。


「え、でも、何も準備なんかしてない」

「いいよ、行くぞ」


 彼は私の手を強く引き、そのまま玄関へと向かう。


「ねぇ、ちょっと!こんなんで行けないよ!」


 必死に訴えて抵抗してみるものの、私は強引に外へと連れ出されてしまった。

 本当人の話を聞かない男!!!!!
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