偽王子と、甘い偽恋
 いつも通り昼休み、佐々木さんとランチに向かっていた時のことだった。

 今日はいつもより佐々木さんの距離が近くて、私は首を傾げながら彼女を見ていた。


「な、なんですか」

「…渋谷さんの匂いがするんですけど」

「え!?」


 眉を顰めてこちらを凝視する佐々木さんに、至って潔白だと言うように、私はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。

 臣くん一筋! 臣くんしか勝たん!

 必死にそんな看板を掲げ、渋谷さんと何かなんてあるはずがないと全身で訴えると、佐々木さんは深々と溜息を吐いた。


「また何かやってます?あのお猿」

「猿?」


 そもそも、お猿と渋谷さんが私の頭の中で結びつかないのですが。

 そう思いつつ、私は唖然として佐々木さんを見つめていた。


「わかんないんですよね。私も全然、何も言われないまま急に香水をかけられて」

「ああ、しょうもないことやってるんですね。無視しといていいですよ。私もあの人のすることよくわかんないんで」

「これであらぬ噂立てられたら、どうしましょう…。死んでも嫌なんですけど…」

「まあ、噂にはなるかもしれませんね。あの人がいつも着けてる香水の匂いがしたら。まあ、でも、本当微かになんで、近寄らないと分かんないレベル」

「マジでいい迷惑!!!!」


 憤慨しながら、私たちは並んでランチの場所にありつく。
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