偽王子と、甘い偽恋
「ほ、本当に違うくて!会社の先輩の悪智恵なの!」

「は?」

「もうこの際だから、白状すると…、デートの時の最後に目を瞑れって言ったのも、臣くんの前でわざと親しいふりした人も、今回の香水のも全部、同じ先輩がアドバイスくれて…」


 白状した瞬間、怒気を含んでいた彼の表情が、ほんの少しだけ安堵で和らいだ気がした。

 臣くんは私の手首を拘束していた手を離すと、今度は肩に手を置き、そのまま脱衣所の方へと押し進める。


「え!?急に何!?」

「風呂入るぞ、臭い。後それ、クリーニング明日持ってく」


 そう言いながら私のスーツのジャケットを脱がせてしまう。


「待て待て!待て!」

「浮気じゃなかったからよかったなんて、話になんねぇから。むしろあの時のあいつの顔が思い浮かんで余計イラっとしたわ」

「お風呂は入るけど、このまま一緒に入る気!?」

「そうだけど」

「やだ!」

「は?」


 ああ、もうだめだ。言い方を間違えて、余計に彼を刺激してしまった。

 久しぶりに会って、いきなり一緒にお風呂なんて。

 ただ恥ずかしくてパニックになっただけなのに、反射的に強く拒否してしまった。

 臣くんは眉間に皺を寄せると、重い溜息を吐き出した。


「やだとかねぇから」


 結局、強引に服を脱がされ、十五分にわたる必死の攻防も虚しく、私達は並んでバスルームの中にいた。
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