偽王子と、甘い偽恋
 アトラクションは平日でも、人気なものは長蛇の列を作っていた。

 人混みが好きではない臣くんをあそこに並ばせるのは可哀想だし、そもそもこの人、激しいアトラクションなんて乗れるのだろうか。

 疑問に思いつつ隣に立つ彼を見ると、案の定、すでに眉間に深い皺を寄せていた。

 せっかくここに来て、そんな顔をするのはあんたくらいだろうに。

 あまりにも不機嫌オーラ全開だったので、私は苦笑いしながら彼の手を引き、比較的人の少ないエリアへと向かった。


「ねぇ、知ってた?臣太郎」

「なんだよ、その変な呼び方。やめろや」

「ここはアトラクションに乗るだけが楽しいわけじゃないんだぜ」


 そう言いながら臣くんに私のスマートフォンを押し付けると、彼は怪訝そうに首を傾げた。


「ここはね、写真映えスポットがたくさんあるんですよ。だから、今日はカメラマンとなってりりか様の後を追うといいですよ」

「めんどくさ…」

「妥協してやってんだろうがよ、この偽王子が」

「偽王子?」


 しまった、この呼び方臣くんの前でしてないんだった。

 心の声が漏れたことに焦りつつも、私は強引に咳払いで誤魔化し、試しにレンガに隠れマークがついている場所でポーズを決めてみた。

 すると、なぜか彼に笑われてしまい、猛烈な羞恥心が湧きあがってくる。


「ちょっと、モデルが悪いわこれ」

「あんだと!?」


 失礼なカメラマンめ。

 モデルをやる気にさせてみろやと言いたかったけれど、黙っておいた。
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