偽王子と、甘い偽恋
 その日、遅くまで遊び、最後のパレードを見終わったところだった。

 この後は近くのホテルに戻り、一泊する予定だ。

 周りの客もぞろぞろと帰路につき始めた頃、臣くんは繋いでいた私の手をぐいと引っ張り、人の流れから横に逸れた。

 驚いて彼を見上げると、「ちょっと付き合って」とだけ言い、パークの象徴である城の前へと向かっていく。


「え!?」


 まさかの行動に戸惑いながらも引っ張られ、辿り着いた城の前。

 辺りはすでに人影がまばらで、ほとんど誰もいない。少し離れた場所に、出口へ向かう人々と、黙々と清掃をこなすスタッフの姿がわずかに見える程度だ。


「え、ねぇ、迷惑かかっちゃうよ。もう閉園するのに」

「いいから。少しだけならって許可もらってる」

「ええ!?」


 なんでわざわざ…、と言いかけたけれど、臣くんの様子がいつもと違うことに気づき、言葉を飲み込んだ。

 珍しくどこか緊張しているような、硬い表情。
 普段の彼らしくない余裕のない顔に、私は思わず首を傾げる。


「…臣くん?」

「いろいろ考えたんだけどさ。やっぱり、りりかにはここがいいかなって」


 そう呟きながら、臣くんはポケットから小さな箱を取り出し、そして突然、私の前で片膝を突いた。

 差し出された箱の中には、眩いほどの光を放つ、大きなダイヤのついた指輪。

 私は目を見開きこの光景を、この目に焼き付けていた。
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