偽王子と、甘い偽恋
「りりか」

「いやいや、ちょっと待って…。心の準備が…」

「おい、ここまでして、待ってられるわけねぇだろうが」


 鋭いツッコミにそうだよねと納得はしつつも、私の心臓は今までにないほどの爆音を鳴らしている。

 臣くんの瞳をじっと見つめると、彼は少しだけ柔らかく微笑み、真っ直ぐに私だけを射抜いていた。


──────俺と、結婚してください。


 いつかなんて、そんな不明確な約束をずっとしてきた。

 臣くんだって、期待させるような匂わせ発言ばかりで、肝心なところは一度もはっきりと言葉にしてこなかったのに。


「で、でも、何も解決もしてない」

「何の話?」

「奥平さんのことだって…」

「とっくに断ってるけど?」

「ええ!?」


 驚愕する私に呆れたのか、彼は立ち上がるとわざとらしく溜息を吐いた。


「なあ、何で今までの発言でわからないわけ?俺が一瞬でも、違う人を選ぶと思った?」

「だ、だって、会社のこともあるし、お父さん許さなかったでしょう?」

「まあ、でも関係ねぇよな。てか、俺が社長になった時点で、政略結婚なんてしなくても、上手くいくに決まってるし」


 すごい自信。根拠なんてどこにもないはずなのに、臣くんが断言すると、本当に未来がその通りになってしまうような気がする。
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