偽王子と、甘い偽恋
大体の家庭はどこも姫が強い。
 一週間後のことだった。

 案の定、うちの父は「すぐに連れてきなさい!」とお怒りモード。

 臣くんに「私のパパは、娘を溺愛してやまないタイプだから。手強いよ」と事前に伝えると、彼は眉間に皺を寄せたまま無言で頷いていた。

 私の父は、臣くんのお父様とはまた質の違う、頑固親父である。そんな一抹の不安を抱えながら、私は臣くんを連れ、久しぶりに自分の実家の鍵を開け、ドアを開けた。


「ただいま~」

「おかえり~!」


 リビングから聞こえてきた母の元気な声と同時に、ドスン! という激しい鈍音が響き渡る。


「ちょっと、パパ何してんの~!」


 どうやら、うちの父親が盛大に転んだらしい。恥ずかしい、情けない。

 向こうもまさかの娘の婚約者の登場に、よほど動揺し、緊張していたのだと思う。私は居たたまれない気持ちで臣くんの前にスリッパを並べ、自分も履き替えて中へと進んだ。


「ただいま…?」


 恐る恐る中を覗き込むと、そこには転んだ父を必死に支える母の姿があった。そして、その光景を少しだけ目を見開いて呆然と見つめる臣くん。

 …どんな初対面だよ、これ。


「あの、大丈夫ですか…」

「君に心配される筋合いはない!」

「あ、はい」

「ちょっと!自分が転んで恥ずかしいからって臣くんに当たらないでよ!」


 心配して声を掛けた臣くんに向かって、怒鳴りつける父。
 私は負けじと怒鳴り返した。

 当の臣くんは特に気にする様子もなく、ただ苦笑いを浮かべている。
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