偽王子と、甘い偽恋
「りりか、よくやった…」

「え?」

「顔良し、性格良し、常識良し、そんで玉の輿」

「恥ずかしいから本人の目の前でそんな話しないで!」

「光栄です」


 母はもう、隠しきれない満足感を顔に浮かべている。

 わずか五分で母を完全に落としてしまうとは、…この男、やはり恐ろしい。


「な、なんだよ、これは」


 おっと、こちらには反対するタイミングを失ってあたふたしているおじじが一匹。

 こちらもまた、臣くんに調理されるのを待つばかりの状態だ。まな板の上でビチビチと跳ねている魚と何ら変わりない。あとはいつ、首根っこをバッサリといかれるか。


「か、完璧すぎて非の打ちどころがないじゃないか!」

「ありがとうございます」


 はい、落とされた~~~~~!

 このチョロさには私自身も身に覚えがありすぎて、血の繋がりを感じずにはいられない。情けない。

 偽王子、本田家をわずか五分で完全攻略。


「でも、何でりりかだったのかしら。あなたくらいの人なら、もっと良いご令嬢とかいたでしょ」


 母の素朴な、けれど核心を突く問いかけに、臣くんは「いないです」と即答した。その返事の速さと迷いのなさは、隣にいる私が驚くほど。


「りりかさんしかいないんです。こんなに綺麗で、純粋で、…裏がなくて、守ってあげたくなる女性で、俺には、りりかさんしかいないです」


 そう言い切った後、「これだけじゃ語り尽くせないくらい」と一言付け足され、聞いているこちらの顔が火照っていく。
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