偽王子と、甘い偽恋
「なんだ、急に。騒がしい」

「結婚するから」

「は?」

「だから、見合い相手探すとか、そんな時間の無駄なことしなくていいよ。近い内に籍も入れるし」


 その断言には、私も臣くんのお父様も呆然とするしかなかった。

 近い内? 確かに近い内だとは思ってたよ…?
 だけど、私は一年後くらいの未来を想像していた。

 だが、今の臣くんを見ているとどうやら違うらしい。
 明らかに数ヶ月以内…、いや、数週間以内、下手をすれば明日とでも言い出しかねない勢いだ。

 この男、次に何を口にするか分からなくて本当に恐ろしい。

 当の本人は、周囲の困惑を余所に堂々として、「何か悪いことでも?」と言いたげな澄ました表情を浮かべている。


「何言って…」

「いいから。絶対会社を潰すなんてことさせない。この会社も、従業員も守るし、その上で、俺は欲しいものも手に入れる。墓は豪華にしてやるから期待して大人しく待っとけ」


 …ちょっと、色々と問題発言が過ぎませんか。しかも墓って。暗に「死ぬのを期待して待ってろ」と言わんばかりの物言い。そんなことを父親にぶつけるのは、世界中であなたくらいのものですよ。

 もちろん、本当に早く死ねという意味ではないのは分かっている。彼のご両親はまだまだ長生きするだろうし、その長い老後も安泰を築いてみせるから安心しろ、と言いたいのだと思う。

 不器用で、毒舌で、問題だらけの彼。だけどその自信に、私は思わず笑ってしまった。彼らしい、精一杯の不器用な親孝行の宣言だったから。

 私も臣くんの隣に並び、ゆっくりと深く頭を下げた。


「確かに、私には何もありません。でも、臣くんを想う気持ちはだれにも負けないです。だから、臣くんを私にください!」


 言い切った瞬間、ハッと我に返った。

 逆じゃない…?
  私、こんなセリフ、臣くんにすら言われてない。

 時代錯誤な男前発言をしてしまった自分に気づき、猛烈に顔が火照っていく。

 ふと横を見ると、臣くんが肩を震わせて笑いを堪えているのが見えた。

 この男~~~~~~~~~~!
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