偽王子と、甘い偽恋
 ふっと、正面から笑い声が降ってきた。

 驚いて顔を上げると、臣くんのお父様が、今まで見たこともないような柔らかな表情で笑っていた。


「…本当、墓は豪華にしてやる、だの、臣をくださいだの、変人同士でお似合いだな」


 今、もしかして感動のシーンでディスられてますか?

 一生に一度あるかないかの、決死の覚悟で挑んだ感動的な場面なんですけど。嘘でしょ?

 隣の臣くんを見ると、彼は小さく吐息をつき、心底呆れたような顔をしていた。

 人生最大のプロポーズ返しをぶちかました挙げ句、親子揃って笑われるなんて。わたしゃ大真面目だよ。

 だけど、お父様はゆっくりと椅子から立ち上がると、今度は真剣な眼差しを私に向けた。


「言うことも聞かないし、逃げ癖はあるし、おまけに横暴で、不出来な息子ですが、りりかさん。臣をよろしくお願いします」


 そう言って、彼のお父様が、静かに頭を下げた。
 その瞬間、視界がじわリと滲んだ。

 こんな風に、真っ直ぐに認めてもらえるなんて思ってもみなかった。

 これはきっと、臣くんが必死に抗って、努力してきた証だ。一度は投げ出しそうになった道でも、彼は自分で信頼を取り戻し、未来を切り拓いた。その報いが、今ここにある。


「こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願いします!」


 私は勢いよく頭を下げた。

 この、不器用で愛おしい臣くんを、絶対に、私が幸せにしてみせる。
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