偽王子と、甘い偽恋
腹黒王子の独占欲は止まらない。
 それから二か月後、社内でのことだった。


「結婚しました~~~~~~!」

「はいはい、おめでとさん」


 投げやりな祝辞をくれたのは、隣の席の渋谷さんだ。

 私が左手の薬指に輝くものを見せつけながら報告しても、彼は心底興味なさそうに視線を流すだけ。

 というのも、ここしばらくずっと「私、千早になります!」と言いふらしていたから、いい加減うざったくなってきたのだと思う。


「ねぇねぇ、羨ましい!?渋谷さん!私、千早 りりかになったんですよ!」

「うるせぇ」

「うるさくない!」


 浮かれモード全開で絡みに行くと、渋谷さんは顔を顰め、面倒そうにマウスをクリックした。


「あ、てか俺らもその内、結婚するから」

「えええええええええ!?」

「あ、うるせ」


 佐々木さんからそんな話聞いてないんですが!

 まさかの電撃結婚宣言に、私は開いた口が塞がらなくなった。


「え、え?いつ頃ですか?」

「俺らはまだ、一年後とか、そんなん。ちょうど最近話したところ」

「わお、結婚式には呼んでください」

「しないと思うけどな」

「ええ、何で!?」


 結婚式といえば女の子の永遠の夢だとばかり思い込んでいた。

 だから、あえてしないという選択肢を選ぶのが、今の私には不思議でならなかった。
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