偽王子と、甘い偽恋
「本当、世間知らずな姫様だよな。今時、結婚式上げないくらい珍しい話でもないよ」

「え、そうなんですか?結婚式は女の子の夢だと思ってました…」

「まあ、夢な女性もいるだろうけどさ、こだわりない、あげたくないって女性も一定数いるんだよ」


 そう言われ、「そうなんですね…」と、力なく返した。

 女の子の夢、なんて大口を叩いたけれど、結婚式は一人でするものではない。肝心の臣くんと、そんな話は一度もしていなかった。

 自分一人だけが舞い上がっていたようで、急に恥ずかしくなる。


「渋谷さんのおかげで、少し冷静になれました」

「常に落ち着けよ。もう人妻なんだから、しおらしくなれって」

「人妻って言い方、何かやめてくださいよ」


 言い方がどう聞いても悪いだろ。
 心の中で毒づきながら、私は渋々業務に戻った。

 結婚式。今まではただ、ぼーっと夢に見ていただけだったけれど、臣くんの場合は親戚付き合いや会社の立場もあるし、もしかしたら盛大な式を挙げなければならないのかもしれない。

 だけど、私自身はそんな派手なものは望んでいなくて…、できるなら二人きりでもいいから、誰にも邪魔されず、静かに誓いを立てたい。

 そんなことを、パソコンの画面を見つめながらぼんやりと考えていた。
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