偽王子と、甘い偽恋
「…絶対二人式にしよ」


 小さな声でそう呟いた臣くんに「え?」と聞き返すと、今まで以上に強い力で抱きしめられた。


「え!?痛い痛い!」

「はあ、今の可愛すぎるな」

「はあ!?そんなの知ってますけど!」

「何だ、その自信」


 呆れたように言いながらも、彼はなかなか顔を上げてはくれない。

 どうやら、私の言葉にかなり照れてしまっているらしい。

 いつも余裕たっぷりな彼のこんな姿、なかなか見られないから新鮮だ。


「俺も一緒だよ。誰にも見せたくないって思う。だけど、もし理想の結婚式があるなら、それを叶えてやりたいなって思ったんだよ」


 微かな声だったけれど、そこには確かな熱が宿っていた。

 漏れ出た独占欲と、私を一番に想ってくれる優しさ。
 それがどうしようもなく愛おしい。

 彼の方を少しだけ振り返り、茶化すように笑いかけると、臣くんは案の定、不機嫌そうに眉を寄せた。

 きっと今可愛いなんて言ったら本気で怒るかもしれないけれど、そんな彼がたまらなく愛らしい。

 私のために、彼の感情が一つ一つ動いていく瞬間。それだけで、自分が世界で一番幸せな女なんじゃないかと思う。


「はあ、早く飯食って風呂入ろ」

「へ?」

「今日も絶対可愛がる」


 とんでもない爆弾発言を残して、彼は着替えのために自室へと去っていった。

 …今の、どういう意味で言った!?

 呆然と立ち尽くしながらも、私は吹き出しそうになっていた鍋の火を慌てて止める。

 結婚してからも、この偽王子からの溺愛は、どこまでも甘い。
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