偽王子と、甘い偽恋
偽王子と秘密の契約。
「い、いやいや、いやいやいやいや!違うから!」


 慌てて拒絶する私の目の前で、おみさんは不快そうに顔を顰めている。

 あまりの態度の違いにも驚きだし、そんな破廉恥な下心を持って家に来ることを許可した覚えは断じてない!

 そもそも私は処女なのだから、それをこんなところで雑に捨てる気もさらさらない。


「…処女?」

「口を慎みくださいな!」

「んだよ、その変な喋り方は」


 私の話し方にか、あるいはこの状況にか、顔面国宝は心底呆れたような表情を浮かべている。

 女遊びの"お"の字も知らなそうに見えた男性が、実はバリバリに女慣れした遊び人だったなんて。

 そして当然ながら、そこに王子様の風格など、もはや微塵も存在しなかった。


「処女はだるいな。後々面倒」

「誰も抱いてくれなんてお願いしてないんですけど!」


 そもそも、処女であることを否定するのすら忘れていた。
 私の乙女のプライドは、もうズタボロ。


「え、まじで男の経験ねぇの?」

「無いって言ってるでしょ!!」


 まずい、王子様のフィルターが外れた途端、緊張もときめきも無くなってきた。この男は私が憧れる恋する王子様なんかじゃない。

 ただの悪魔だ。腹黒偽王子と名付けよう。

 これじゃあ、また運命の王子様探し直し…、なんて懲りずにそんなことを考えていた。
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