偽王子と、甘い偽恋
「へぇ、顔悪くねぇのに何で?」

「なんで?って聞かれても…。好きになるような人にはみんな相手がいたり…、とか?」

「理想たけぇの?」

「そんなこと…!」


 否定しようとしたけれど、先日、渋谷さんにすら呆れられたばかりだったと思い出し、何も言えなくなった。

 私はおそらく、理想が高いのだと思う。ここ最近、渋谷さんに呆れられ、鼻で笑われ、馬鹿にされているうちに、流石の私でも多少は現実を受け入れ始めていた。


「…高いのかもね」

「例えば?」

「まずイケメンが良い。優しい。私しか見ない。浮気しない。私をお姫様扱いしてくれる人。甘やかしてくれる人。それと…」

「あー、はいはい。OK」


 何かを察したように、おみさんは話を遮った。

 まだまだ言い足りないほどあるのに、勝手に止められて不完全燃焼だ。

 おみさんはそれに対して悪びれる様子もなく、「お前さ」と、まだ出会って間もない相手に向かって失礼な呼称を投げる。

 私が「はあ?」と言いかけるより先に、彼はさらに顔を近づけてきた。


「恋愛したことないだろ」


 そう言い放たれて、思わず絶句する。

 確かに当たっているけれど、どこまでも失礼に失礼を重ねる男。

 私の尊厳という尊厳が、ことごとく削られている。


「な、な、な……!」

「今時、そんな歳になってからお姫様扱いとか、初めて聞いたわ。いるんな、そんな希少種」

「い、いるでしょ!みんな憧れてるはず…」

「いや、周りは現実見てるから」


 そう言い放たれ、ガーンという効果音が聞こえてきた気がした。

 現実を見ていないと言われたのは、これで二度目だ。
 それも、二人とも口の悪い偽王子。

 綺麗な顔をした男に、天使のような性格をした人間はいないわけ!?
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