偽王子と、甘い偽恋
◝✩


「で、周りが引いて彼氏が出来ねぇってことな」


 気付けば、我が家の冷蔵庫にあった甘めのフルーツのチューハイを勝手に開け、私と臣くんは話し込んでいた。

 名前も再度、きちんと聞き出した。

 千早(ちはや) (おみ)
 二十四歳、カフェ店員。

 大学卒業後、就職も何も決まっていなかったところを、バイト先の店長にスカウトされてそのまま就職。今は美男カフェ店員として働き続けているらしい。

 おそらく、臣くんが辞めてしまったら女性客が一気に減り、売り上げが激減するから引き止められたのだと安易に予想がついた。

 あのカフェは二号店で、オープンに合わせて彼が配属されたのだという。

 それにしてもこの男、話を聞き出すのが上手すぎる。
 気付いたら、私の悩みという悩みをすべて吐き出させられていた。

 目の前に酒がある理由は、私が出したからではない。彼が勝手に冷蔵庫を開けて見つけるなり、なぜか一緒に飲むことになっていた。

 あまりに自然な動作すぎて、後から気づいて鳥肌が立った。


「ちょっと待って!あんた怖い!怖いよ!」

「何が?」

「自然に酒飲んで、自然に悩み聞きだしてんじゃないよ!え?元からここに住んでましたか?って聞きたくなるばりに、堂々としてて怖いわ!」

「普通客がいたら飲み物くらい出すだろ。気利かねぇ」

「泊めてもらう立場で文句言うなよ」


 そうツッコミながらため息を吐き、私はするめを口に運ぶ。


「姫、ってか、おっさん」

「あんたの前で取り繕うのはやめた。すべて無駄だ」

「お姫様扱いされてぇなら裏までちゃんと取り繕えや」


 裏まで完璧なお姫様なんて、そんなの疲れるに決まっている。

 どんなお姫様だって、裏では「はぁ~~~~~~」なんて気の抜けた声を出しながら、足を放り出して寝転がっている瞬間があるはず。


 …………知らんけど。
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