偽王子と、甘い偽恋
「で、何で臣くんは振られたの?」

「振られたんじゃなくて振ったんだよ」

「うわ、プライド高。だめだよ~?ビンタされた上に、そんなださいこと言っちゃ」

「嘘は吐いてねぇんだよ」


 そう言いながら缶チューハイを飲み干し、べこっと缶を潰している。


「そもそも、彼女でもねぇし」

「え?」

「家賃とか食費代浮くから、なついてるふりしたら、何か彼氏判定されて、だるくなったから勘違いすんなよって言ったら殴られた」

「ゴミ of ゴミ」


 最低すぎる話に唖然とする。

 本当に、渋谷さん以上のクズを発見してしまった。

 どうして私はこんな奴を一瞬でも"運命の王子様"だなんて思ったのだろう。過去の記憶から、その部分だけを綺麗に消し去りたい。


「てか、相手が言ったんだよ。こうやって転々としてたら、養ってあげるからおいでって。それに対して付き合うなんか一言も言ってない」

「それはそうかもだけど…」


 他にやり方はなかったわけ?という言葉は、飲み込んで喉元で止めた。

 私が口を出すことではないと思ったから。


「はあ、やっぱ世の中って顔?じゃなきゃあんたみたいな人間選ばないよね?」

「世の中には顔が良いクズも需要があったりするんだよ。一定数いる。クズをどうしても好きになる女が」

「自分で言う言葉じゃないでしょうに」


 そう言いながら自分も缶チューハイを飲み干し、缶を小さく潰した。


「てか、好きというか、依存だろ」

「え?」

「こっちは自分の都合よく相手を動かしたいから、相手に好意があるふりをする。向こうは弱ってる時に甘えられる場所が出来たら、甘えて、依存を好きだって勘違いする。それだけのことだよ」


 意外にも、彼はすごく寂しい考えをしていると思った。

 そもそも「好き」と「依存」の違いは何なのだろうか。
 その人じゃなきゃだめだ、という気持ちは恋愛にもあるはず。
 その人がいいから、その人に想いを馳せる。

 それと同じ、ではないのだろうか。
 私にはまだ、よく分からない。
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