偽王子と、甘い偽恋
「まあ、たぶん、てかほぼ九割、付き合えたとしても振られると思う」

「言い過ぎでは?」

「そのくらい、お前の理想を叶えてくのは面倒ってこと」


 そう言って、彼はポケットから煙草を取り出した。


「禁煙なんですけど」

「はいはい、ベランダ借りますよって」


 臣くんは一度玄関に向かって自分の靴を取ってくると、掃き出し窓を開けて外に出た。

 我が家に男性がいる状況には、まだ慣れない。
 どれほど眺めていても、ひどく変な感じがする。

 時刻を見ると、すでに日付を跨ぐ直前だった。そろそろ寝る準備をしようと、飲み干した空き缶などのゴミを回収し、軽く片付けを済ませた。

 でも、臣くんと話してみてよかった。
 改めて、私の理想が現実には存在しないのだとはっきり理解できたから。
 あまりにも夢を見すぎだと他人から指摘されるまで気づけなかったなんて、情けないにも程があるけれど。

 片付けを終え、客用の布団を寝室から取り出そうとしていた。

 滅多に使わないため上の方にしまっており、無理をして高い場所にある布団を引っ張り出そうとしていた。爪先立ちで腕を伸ばすも、なかなか届かない。


「ふんっ…!」


 決して可愛くない声を出しながら必死に手を伸ばしていると、不意に、背後から嗅ぎ慣れない匂いがした。

 同時に私の頭上から腕が伸びる。
 そして、引っ張りたかったはずの布団が、なぜか奥へと押し込まれた。

 この家には現在、私と臣くんしかいない。
 こんなことをするのは、彼以外にいない。


「ああ!何してんの!」

「身長ちっせ。よくそんなんで生きてけんな」

「馬鹿にしすぎ…!」


 文句を言おうと背後を振り返ると、そこには至近距離で、あの綺麗な顔面国宝がいた。

 ぼんっ、と効果音が鳴った気がした。
 自分の顔が、熱さで爆発してしまったような心地だった。
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