偽王子と、甘い偽恋
「その年齢でそこまで経験もなくて純粋だと、男は手を出しにくいんだよ。それに、女は多少、男を振り回すくらいのが可愛いよ」


 そう言って、彼は私の頬にかかっていた髪に触れ、毛先をくるくるともてあそび始めた。

 女性を振り回す男に、男を振り回す女性が可愛いと言われても説得力がない気がするけれど。

 そんなことを思いつつも、私は臣くんの指先が私の髪を弄ぶ様子を、ただじっと見つめていた。


「…私、別に慣れてないってことはないし。だって、男性に抱き着いたりできるもん」


 渋谷さんにアピールしていた時、酔ったふりをして抱き着くことくらいはできていた。

 そこまで重度の免疫不全というわけではないはず。

 そう強がってみせると、臣くんが顔をぐっと近づけてきた。
 その瞬間、顔に熱がぶわっと湧き上がるのを感じた。

 こんな反応になったことなんて今までにないのに、臣くんを前にすると自分も知らない自分が顔を出してくる。


「その反応でまじで言ってんの?そう見えねぇけど」

「んくぅあ!」


 変な声を出して後ろに下がると、臣くんは露骨に顔を顰めた。
 自分でも、とんでもなく可愛くない声が出た自覚はある。


「マジで運命の王子なんて求めてる姫の反応なわけ?信じらんねぇくらい不細工な声出てて引くんだけど」

「姫だって、不意打ちには弱いんです!!!!!!!!!」

「ちょっと、お前と話してると、話進まない」


 そう言って、私の頬を両手で思い切り挟み込んできた。

 顔を潰され、唇が突き出た間抜けな顔の状態で、強制的に臣くんと目を合わせさせられる。

 そのまま額をこつんとぶつけられ、至近距離で視線が絡み合った。
 もう、逸らすことすらできない。


「俺で練習すれば?」

「……は?」

「俺なら、りりかの理想全部叶えられると思うし、男とどう過ごせばいいか、変な男に捕まんないかまで見てやれるけど」


 とんでもない提案をさらりとしてくる臣くんに、私は開いた口が塞がらなかった。
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