偽王子と、甘い偽恋
「その代わりなんだけど」


 知ってた、知っていましたとも。
 この男が、ただでそんな提案をしてくるはずがないことくらい。
 そういう計算を瞬時に働かせる男なんでした。

 私は、続く臣くんの言葉に身構えた。


「しばらく家泊めて」

「……………は?」


 あまりに予想外の言葉に、私は唖然とする。

 今日だけではなく、これからもここに入り浸るつもりか、この男は。


「な、なんで!?臣くんなら困らないでしょ!泊まる場所くらい!たっくさん、助けてくれる女の人いるでしょ!?」

「また変な期待されんのも、相手を探すのも面倒なんだよ。りりかだったら、俺に惚れなんかしないだろうし。理想と真反対、だろ?」

「えー…、それはそう」

「肯定されると腹立つな。何だお前」


 そう言われ、再び思い切り片手で頬を潰される。

 この男、私の頬を好き勝手いじりすぎている…!


「お前も、普通の恋愛する前に、練習がてら俺で理想を叶えとけばいいじゃん。そしたら悔いなくね?」


 その言葉は、あまりにも魅力的で、同時にとんでもなく危険な響きを持っていた。

 確かに、私の理想は山ほどある。
 理想の王子様とやってみたいことも、たくさん。

 でも、それを臣くんと?
 練習で交際して、そんなこと…。

 至近距離で臣くんの顔を見つめていると、あまりの顔面の強さに、まともな思考が弾け飛んでしまう。

 こんなに整った顔の人は、きっと他にはいない。性格は最悪のクズだと分かっていても、正直、顔だけは私のタイプのど真ん中に突き刺さっている。

 何も言い返せなくなり、喉の奥でぐっと言葉が詰まった。
< 26 / 177 >

この作品をシェア

pagetop