偽王子と、甘い偽恋
毒と甘さの共存。
 昨夜の喧騒が嘘だったかのような、静かな朝。

 カーテンの隙間から差し込む光は穏やかで暖かく、このままずっと微睡みのなかにいたいと思わせる。

 まだ眠りの中にいた私は、ふとお腹のあたりに、重厚で熱を持った何か、が触れていることに気づいた。

 その時、「ん?」と違和感を覚えてお腹の上へ視線を落とすと、そこには見慣れない大きな手があった。

 薄い皮膚の下に浮き出た青い血管、関節の角張ったごつごつとした指。
 女性のそれとは明らかに違う、骨張った男性特有の手。

 なんで、こんなものが私のお腹の上にあるんだろう。

 困惑しつつ、背中に感じる確かな体温を確かめるように振り返ると、そこには端正な顔立ちで眠りについている王子様がいた。

 眠り姫ならぬ、眠り王子。

 まだ回らない頭でそんなくだらないことを考えていたけれど、事態を把握するにつれて急速に思考が冴え渡り、顔に一気に熱がのぼる。


「きゃああああああああ!」


 叫び声を上げると同時に跳ね起き、私は手近にあった枕を掴んで、臣くんの頭を何度も叩きつけた。


「いってぇ!ふざけんな!」

「何抱きしめてきてんだ!この男!」

「腹触られたぐらいで騒いでんじゃねぇよ!」


 朝からそんな罵声を浴びせ合いながら、私はなおも枕を投げつける。

 起きて早々、心臓に悪すぎる。

 昨夜眠りにつく時は、お互い背中を向けていたはずなのに。いつの間にかこちらを抱き寄せ、密着して眠っていた臣くんが信じられなかった。
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