偽王子と、甘い偽恋
 そうして臣くんは仕事に向かい、私は部屋の掃除を済ませてから、その合間に買い物へ出ることにした。

 なんだかんだ言っても、人が一人増えるだけで必要なものは増える。

 もともと来客が少ないし、長期的に誰かが滞在することなんて想定していなかった。だけど、しばらく居座るとなれば、彼専用の食器なども用意しておく必要がある。

 近くのショッピングモールへ足を運び、食器売り場で臣くんが使うための物を選んでいた。

 そもそも、いついなくなるかも分からない相手に、わざわざ新しく購入する必要があるのだろうか。そんな疑問が頭をよぎりつつも、あって困るものではないと考え直し、いくつかカゴに入れてレジへ向かった。

 臣くんがいなくなっても、食器なら私自身が予備として使えるし。

 あとは歯ブラシやタオルなどの日用品を買い込み、最後にハンバーグ用の食材などを揃えて帰路につく。

 両手がいっぱいになるほどの荷物になってしまい、結局、帰りはタクシーを使うことになった。普段、これほど重たい買い物をすることなんて滅多にない。

 それにしても、まさか私が男性のことを考えながら物を選ぶ日が来るなんて、思ってもみなかった。せいぜい、父親の誕生日にプレゼントを選ぶ時くらい。

 …自分で言っておきながら、なんだか悲しくなってきた。
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