偽王子と、甘い偽恋
 夕飯を済ませた後、お風呂を溜めながら洗い物に取り掛かる。

 すると朝と同じように、臣くんが背後から近づいてきて、洗い物をしている私の手元をじっと覗き込んできた。


「何さ」

「別に。監視」

「何それ。監視なんてされなくても洗い物ぐらいできます~~~」


 彼に笑って言い返すと、背中に感じる彼の気配が、ほんの少しだけ強まった。

 それから彼は、私の袖を丁寧にまくり上げ、水に濡れないよう整えてくれた。

 こういうシーン、ドラマで見たことある!

 不意打ちの気遣いに、思わず胸の奥がキュンと鳴るのを感じた。


「めちゃくちゃカップルじゃん~~~~~!」

「そう振舞ってんだから、そう見えるに決まってんじゃん」


 彼はくすっと笑い、朝のようにふわりと後ろから私を抱きしめた。

 これも、居候させていることへのサービスなのか。すべてが演技だと分かってはいても、朝から続くこの甘い空気と、本当に相手を思っているかのような彼の振る舞いに、時折勘違いしそうになる。

 ときめくことなんてないと思っていたのに、意外にもそんな場面はすでに何度も訪れていた。それは単に彼の顔が良いせいなのか、それともこの状況のせいなのか。


「何か他にしてほしい事とかねぇの?」

「え?」

「飯作ってくれたお礼。今気分良いから、何でもいいよ」


 そう言いながら、彼は後ろから私の顔を覗き込み、優しく髪を撫でてきた。

 行動の一つひとつが甘すぎて、ずっとこんなことをされていたら、私の心臓が持ちそうにない。
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