偽王子と、甘い偽恋
 何かしてほしいこと…と必死に考えて、私は定番中の定番といえるシチュエーションを思いついた。


「あ!」


 突然声を上げて臣くんの方へと振り向き、彼を真っ直ぐに見つめる。

 首を傾げる彼に対し、私は口元を緩ませた。


「ねぇ、何でもって言ったよね?」

「いいよ」

「じゃあ…」






𓂃꙳⋆⭐︎






 それから数分後。壁際に立つ私と、その目の前に立つ彼。


「マジでそんなんでいいわけ?」

「いい!本当にときめくかやってみたかった!」

「はいよ」


 臣くんは呆れた表情を見せたものの、私の目を見ると、そっと近づいて壁に手を突き、一気に距離を詰めてきた。吐息すら感じるほどの近さに、全身の熱が急上昇していく。

 私がお願いしたのは壁ドンだった。

 一度でいいからされてみたかった。一時期、少女漫画で大流行しているのを見て、本当にときめくものなのかという好奇心に駆られていたのだ。

 臣くんはこちらを静かに見下ろしており、私も彼を見上げる。

 だけど、あまりの至近距離にほんの少し照れくささが勝ってしまう。


「どう?」

「まだ平気。キュンってか、圧迫感」

「目の前に自分よりでかい人間居たらそうだろうな」


 そう言って笑うと、臣くんは腕ごと壁に密着させ、さらに私との隙間を埋めてきた。

 その瞬間、場の空気感が一変し、私の反応は一歩遅れた。
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