偽王子と、甘い偽恋
 あまりの近さに息を呑んでいると、臣くんはくすっと笑い、さらに顔を近付けてきた。


「何でときめくんだろうな。こんなのに。逃げられない状況、ってのが、興奮する?」

「な…」


 臣くんは私の足の間に膝を割り込ませ、一切の逃げ場を奪うような体勢を取った。


「俺も、非力な女の子を追い詰めてるって状況は興奮するかも」


 そんな最低な発言に唖然とする。

 顔が良すぎるせいで、この男の本質がとんでもないクズであることを忘れるところだった。


「て、てか、そもそも、ずれてる!私のタイプは王子様系だって言ったでしょ!そこまで合わせてよ!」

「そんなのなったことねぇからわかんねぇよ」


 そう言って笑うと、一瞬にして刺々しさが消え、彼はとろけるように優しく微笑んでみせた。その表情に、私は完全にノックアウト。

 脳内で、もはや恒例となった爆発音が響き、自分が足元から溶けて無くなってしまいそうだった。

 臣くんは呆れたように笑い、「微笑んだくらいで溶けてんじゃねぇよ」と零した。

 顔面国宝による至近距離の微笑み、その破壊力は恐るべし。
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