偽王子と、甘い偽恋
「どうして今日、急に料理してくれる気になったの?」

「腹減ったから」

「…三十点」

「あ?」


 ここで「疲れているりりかのため」なんて言えたら、文句なしに百点のスパダリなのに。

 せめて「早く帰ってきたから」くらいのことは言ってほしかった。
 まあ、作ってくれているだけで文句はないのだけれど。

 その場を離れて着替えを済ませて戻ってくると、臣くんがテーブルの上に料理を並べてくれていた。

 おいしそうなカルボナーラの香りに、ぐぅとお腹が鳴る。

 帰宅してすぐにご飯が用意されているなんてこと、実家を出てからは一度もなかった。

 そして、そんな贅沢を叶えてくれたのが、まさかの偽彼氏役である偽王子だなんて。


「…人にご飯作ってもらうって嬉しいね」


 そう言って笑いかけると、臣くんは数秒の間、私の顔をじっと見ていた。

 少しだけ間が空いてから、彼はふいに目を逸らし、「大げさだろ」なんて言葉をこぼす。それからだんだんと定着してきた指定席へと腰を下ろした。

 いつも通り向かい合って座り、二人で「いただきます」と手を合わせる。私はカルボナーラをフォークに巻き付け、口に運んだ。
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