偽王子と、甘い偽恋
𓂃꙳⋆⭐︎



 そんなことがあり、昼休みに佐々木さんに相談していた。


「普段、佐々木さんと渋谷さんは、どんなデートするんですか?」

「うーん。渋谷さんはドライブが好きだから、時々遠出したりとかもしますけど。遠出して、その現地で何か食べて、家に帰ってきてまったりしたりとか…」


 佐々木さんは思い出すように少し視線を上に向けながら、そう話す。そんな何気ない仕草が少しあざとくて、しかもそれを彼女は完全に無意識にやっている。

 佐々木さんは、普段からぶりっ子のような振る舞いをする人では決してない。あざとさすら感じさせない人なのに、ふとした瞬間に女性らしい可愛らしい動きを、計算なしに見せてくる。それが少しだけ、羨ましい。

 自然に「可愛い」と思われる仕草ができる人なんて、そうそういないと思う。

 勝手な主観だけれど。人はそれぞれ、誰かにこう思われたいという願望があったり、コンプレックスを隠そうとしたり。あるいは、自分を良く見せるために意図的に演じたりするものだと思っていた。

 だからこそ、無意識に可愛さを滲ませることができる佐々木さんのような人は、最強だと思う。


「私も可愛いって思われたさ過ぎるのがダメなんですかね…」

「何の話ですか?」


 渋谷さんとのデートの話からあまりにも飛躍しすぎて、佐々木さんを困惑させてしまった。

 私は一つ大きな溜息を吐いて、週末の臣くんとのデートについて考える。

 あんな顔面国宝と並んで歩くなんて、ただでさえハードルが高いのに、最強の無意識を持つ佐々木さんのような振る舞いなんて、出来ない。もしかしたら、逆立ちの方が簡単かも。

 …簡単とか言って、そもそも逆立ちもできないほどの運動音痴ですけど。
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