偽王子と、甘い偽恋
 店を出てすぐ、私はカップの側面を確認した。

 そこには綺麗な字で"帰り迎えに行く"とだけ書かれていた。

 一緒に帰ろうとかでもなく、迎えに行くと言って有無を言わせないのが、なんとも臣くんらしい。

 思わず口元が緩んでしまうと、佐々木さんはホットのカップに口を付けながら、不思議そうにこちらを見て首を傾げていた。

 どうして、たったこんなことで嬉しくなってしまうんだろう。

 相手は裏では最低最悪な腹黒男で、タイプでも何でもないはずなのに。そんな臣くんのことが気になって仕方がない自分がいる。

 ほんの少し浮ついた気持ちでいると、「本田さん」と佐々木さんが声を掛けてきた。

 
「はい?」

「土曜日、デートの前に時間ありますか?」

「え、まあ…」

「多分、この手の話をうきうきで助けになってくれそうな人がいて、土曜日なら帰ってきてくれそうな気もするんです」

「え、帰ってくる?」


 一体何の話をしているのかも分からないまま、私は土曜日、その謎の人物と会うことになった。
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