偽王子と、甘い偽恋
 雑談を交わしながら、結愛さんは魔法をかけるようにメイクを施していく。

 髪も軽やかな手つきで整えると、あっという間に私の前に鏡を差し出した。

 普段、自分で用意をする時とは全く違う仕上がり。

 鏡の中の自分を見た瞬間、私は驚きのあまり目を見開いた。

 結愛さんは私の後ろに立つと、満足そうな顔をして微笑んでいる。
 私はただ、茫然とその場に固まるしかなかった。

 そこに映っているのは、自分じゃないみたいだと思った。


「…いくら、ですか?」


 消え入りそうな声で質問すると、結愛さんは「え?」と困惑したような声を上げた。


「いくら払えばいいでしょうか!交通費とメイク費合わせてお支払いさせてください!」


 食い気味に詰め寄る私に、結愛さんは苦笑いを浮かべている。


「いや、仕事で来てないからいいわよ」

「そんなわけには!!!!!」


 これほどのプロの施しを無料で受けるなど、笑止千万!!!!!
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