偽王子と、甘い偽恋
「で、今日はどこ行く?」


 臣くんにそう問いかけられ、隣に立つ彼を見る。

 時折こっちにも視線をやりながら、歩幅を合わせてくれている。


「臣くんは楽しくないかと思ったんだけど、どうしても甘いものを食べる臣くんを見てみたく…」

「…嫌な予感すんな」

「甘いもの嫌い?」

「嫌いではない。でも、女の客しかいないような店には入りたくない」

「ああ…」


 ちょうど、そういう店を選んできちゃったんだよな。

 とは、この場では言えなかった。





⋆⸜







 到着するなり、臣くんには若干睨まれた。

 周りは見事に女性客だらけ。この店は内装も可愛らしく、男性一人ではおろか、連れがいても若干入りづらい雰囲気がある。

 私はどうしても、こんなに可愛いお店でデザートを楽しむ臣くんを見てみたかった。

 店の名前は『Alice』という、いかにもな感じ。

 周りの女性客も店員も、みんなが臣くんを見ている。男性客自体が珍しい上に、これほど綺麗な顔をしているのだから、当然のことだとは思う。

 だんだん、おかしくなってきた。

 ファンシーで可愛いお店の中に、この不機嫌な顔をした男が座っているという図が。


「で、お前は俺をどうしたいわけ。日々の嫌がらせかなんか?」

「いやいや、そんなそんな」

「そう言いながら笑ってんじゃねぇよ」


 揺れる肩だけは誤魔化しきれなかったらしい。
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