偽王子と、甘い偽恋
 飲み物を臣くんが受け取ってくれ、私達は店を出た。

 その間に臣くんが私の手を一旦離すと、今度は指を絡める恋人繋ぎに変え、空いた方の手でストローを私の方へと向けてくる。


「ん!?自分で飲むし!」

「いいから。りりかの手小さいから片手だと、落としそう。俺が持っとくから飲めよ」

「別に手離しても…」

「いいから、早く」


 私の提案を一蹴し、彼はストローを向け続けた。

 ほんの少しの照れくささと、手を離さずに握り続けてくれることに、きゅんと胸を打たれる自分がいた。

 臣くんなら、手を繋ぐことなんてどっちでもいいと言いそうなのに、決して離そうとしない。そんな些細なことが嬉しくて、胸が熱くなる。

 大人しくストローを軽く咥え、吸い込むと、酸味と甘みの効いた濃厚なフルーツジュースが口の中に広がった。


「ん!美味しい!」


 私が目を見開いて臣くんを見ると、彼もまた、私が口を付けていたストローをそのまま咥えて吸い込んだ。

 たかが間接キス、されど間接キス。なんだかすごく照れくさい。

 臣くんの様子を伺っていると、彼は顔を顰めて「あま…」と呟いていた。


「フルーツジュースがそういうものでしょ」

「もうちょい酸味強めかと思ってた」


 臣くんの軽い文句に、思わず笑みがこぼれる。


「あ、今日焼き鳥食べたい」

「焼き鳥?」

「うん。近くにさ、ちょっと行ってみたい居酒屋あったから、夜行ってみようよ」

「まあ、いろいろ食えるしな」


 そう言いながら、私たちは商店街を歩き続けた。

 特に特別なデートというわけでもないのに、こうして隣で歩いて話しているだけで、どうしようもなく楽しかった。
< 60 / 177 >

この作品をシェア

pagetop