偽王子と、甘い偽恋
「え、それってまた私とデートしてくれる気ってこと?」


 臣くんの視線がこちらに向く。

 次がなければ、そんな言い方はしないはず。微かな期待を胸に問いかけると、彼はふっと笑い、「行くだろ。まだ、一緒にいるんだから」と当然のことのように答えた。

 嬉しさが半分、切なさが半分。いつか終わりが来るのは分かっているのに、甘い期待だけが膨れ上がって、胸が苦しい。

 
「じゃあ、次もいろいろ考えよ~っと」

「…次は俺が考えるかな」

「え?」

「リードされるのも好きだろ」


 確かに好き…!

 口に出して答えることはなかったけれど、あまりに図星を突かれていて、少しだけ恥ずかしい。

 最低な人だと思っていたのに、時折見せるその甘さは何なのだろう。
 優しくもなんともなくて、いつだって意地悪なのに。


「はあ、恋愛って難しい」

「急になんだよ?」

「なんでもない」


 生返事をする私に、彼は顔を顰めている。

 理想のタイプと実際に惹かれる人が違うなんて、口が裂けても言いたくない。そんなことを言えば自分の気持ちに気づかれてしまうし、遠回しに告白しているようなものだから。

 それに、私自身も今は考える時間が欲しかった。

 これが本当に恋なのかどうか、もう少し慎重に見極めたい。初めて距離感の近い男性と一緒に過ごして、ただ初めての恋だと思い込んで、浮かれている可能性も、まだ捨てきれないから。
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