偽王子と、甘い偽恋
 しばらく時間が経つと、私も臣くんも少しほろ酔いだった。
 外を歩き夜風を浴びて、体の熱がゆっくりと冷まされていく。

 帰り道も、臣くんは手を繋いでいてくれた。私はその手を少し機嫌よく振りながら、隣を歩く。


「まっすぐ歩けって。酒弱いのに、なんで無理して飲んだんだよ」

「楽しかったから~」


 ご機嫌にそう答えながら、また「ふふ」と笑みがこぼれる。

 記憶が飛ぶほどでも、今の自分の状況が見えないほどでもない。ただ、心地よく酔ってはいた。臣くんもいつもより少し顔が赤くて、ほんの少し酔っているように見える。


「いいなあ。本当に彼氏いたらこんな感じかなあ~」

「…王子とか、変なメルヘンな夢見てねぇで、ちゃんと相手の事見て恋愛したら、すぐ彼氏できるだろ。顔も悪くない、愛嬌もあるのに」

「愛嬌あるって、本当?」


 今の私は、何を言われてもきっと素直に受け止めてしまう。

 臣くんの言葉にすら「嬉しいー」と返し、相も変わらず手を振りながら歩き続ける。

 そして、忘れてはいなかった。渋谷さんが言っていたこと。デートの終わり際、臣くんの目の前で十秒間目を瞑れ、という助言を。

 終わりって、家に帰ってから?それとも今みたいな時?どっちだろう。

 考えながらも、私は「ねえ、臣くん?」と呼びかけた。

 臣くんがこちらを向いた瞬間、私は立ち止まり、そっと目を瞑った。
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