偽王子と、甘い偽恋
★彡




 関先から、普段ともに眠るシングルベッドの上へと移動した。時間が経つほどにベッドの軋む音も激しくなる。私たちの荒い吐息、肌のぶつかる音、シーツが擦れる音。聞こえてくるすべての音が、羞恥心をさらに煽り立てた。

 最初こそ初めての私を気遣ってか、溶かしていくように丁寧に愛撫された。指先から全身に熱が広がっていくように、幾度も口付けられる。甘くて、くすぐったくて、何かを考える余裕なんてどこにもない。

 臣くんは奥へとぐっと力を込めながら、私の耳元に優しく唇を寄せた。時折動きを激しくしながらも、私の様子を窺うように速度を緩め、甘えるように身を寄せてくれる。そんな慈しむような行為に、痛みはほとんど感じなかった。

 それでも、時折私を好きであるかのように大事に扱ってくるから、胸が痛い。いつかは離れなければいけない関係性なのに…。

 こんな風に肌を重ねてしまえば、もう後戻りはできない。
 臣くんに対して、特別な想いをより強く抱いてしまうことは分かっていた。


「は…っ…、やばいな、すげぇ可愛い」


 耳元でそんな甘い言葉を吐き、そのまま耳たぶを軽く唇で挟まれる。

 そんな甘い行為に声を出したくはないのに、掠れた小さな吐息がこぼれてしまう。そんな私の反応を見て彼はまた笑い、私の手を握り込むと、手首に口付けてから舌で軽く舐め上げた。

 何度もそんな睦み合いを繰り返した後、彼は首筋に優しく唇を当て、強く吸い付いてきた。


「い…っ、たっ…!」

「…りりかに対しては、変な独占欲湧くな」

「なん、で?」

「わかんねぇ。処女なんてだるいし、絶対抱かねぇのに、りりかだけは俺だけがいいな」


 甘く、掠れた声。

 そんな期待させることばかり、言わないでほしい。
 本気で恋に落ちてしまいそうになるから。
 落ちたところで、あなたは責任なんて取ってくれないくせに。
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