偽王子と、甘い偽恋
 翌朝、陽が差し込み照らされながら、目を覚ました。

 背中に人の体温を直に感じながら、前に回ってきている腕を掴んで眠っていた。その相手が誰かなんて、聞かなくてもわかる。

 恋人でも、何でもないのに。こんなことに幸せを感じるなんて、変だ。

 もう誤魔化しも利かない。私は臣くんが好きだ。
 だけど、伝えられない。

 そう考え込んでいる時、突然腕が動き、もう片方の手が私の頭に回って優しくぽんぽんと撫でられた。


「おはよ」


 後ろから、寝起きの掠れた声が聞こえてくる。

 それだけで顔が熱くなり、臣くんの方を見られない。


「…おはよう」


 そう返事をすると、背中に柔らかな唇が当たるのを感じた。


「ちょ、っと、何!?」

「綺麗なもんが目の前にあったからつい」

「何言って…!」


 そう言いながら何度も押し当てられる唇に、ビクッと体が震える。

 朝から甘すぎる行為に耐えられず、彼の腕を軽くひっかいた。


「いった…、猫かよ…」

「もう…!」


 そう言いながら彼から離れ、急いで服を着る。

 意外にも、彼はいつも通りだった。気まずい空気が流れるわけでもない。

 遊び慣れている男性を相手に、緊張する方が間違いだった。
 彼にとって、こんなことは珍しいことでも何でもないのだから。
< 67 / 177 >

この作品をシェア

pagetop