偽王子と、甘い偽恋
「あ…、ありがとう、ございます…」


 礼を言いながら差し出された手を掴み、立ち上がる。するとその男性は、ふわりと微かに微笑んでから、そっと手を離した。

 すごく優しくて、温かい手だった。
 初めて握った、男性の手。
 今まで、こんなふうに男性の温度に触れる機会もなかった。
 最後に手を繋いだのなんて、幼稚園の遠足の時、二列になって歩くため隣の男の子と手を繋いだのが最後だったと思う。

 その上、こんな運命的な出会い方に、私は懲りもせず期待を膨らませた。
 もしかしたら、この人こそが私の王子様なのではないか。

 だけど、そんな淡い予感に反して、男性は「よかった。それじゃあ、お気をつけて」と言い残し、背を向けて立ち去ってしまう。


「え!?」


 思わず声を上げたが、男性はそのまま足早に去って行った。

 相手は私に対して、運命どころか、惹かれるものすら微塵も感じなかったらしい。

 それでも、また会えるかな、なんて期待を胸に、私は家路についた。
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