偽王子と、甘い偽恋
𓂃꙳⋆⭐︎


「そんなこと、まだ言ってんの?」


 翌朝、昨夜の出来事を報告すると、渋谷さんは心底呆れた表情でそう言った。

 呆れられようが何をされようが、私は昨夜の出会いに何か運命的なものを感じずにはいられなかった。


「だって、そんな手を差し伸べてくれた相手の見た目が麗しいなんて奇跡ありますか!?」

「麗しいなんて言う人間初めて見た」

「渋谷さんも顔だけは麗しいです」

「それはどうも」


 私の発言に鼻で笑い、彼は仕事を続ける。
 会いたい。もう一度、話してみたい。
 その想いは、抑えようもなくどんどん高まっていく。

 馬鹿だと笑われても、私は昨夜の出来事が運命だと信じて疑えなかった。

 こんな私だからこそ、きっと「脳内お花畑少女」なんて言われてしまうのだろうけれど。





𓂃꙳⋆⭐︎





「別に良いんじゃないですか?」


 いつものごとく佐々木さんとランチを共にし、相談に乗ってもらっていた時だった。

 佐々木さんは私の話を笑うことなく聞き終えると、「良いんじゃないですか」とあっさりした返事を零した。


「え!?笑わないで聞いてくれます!?」

「叶うかどうかはともかく、普通なら愛されたいという欲求は誰しも持っているものだと思いますので」

「そうですよね!?」

「ただ、王子様の様な男性がいないって言う渋谷さんの意見には、私も同意です」

「ええ!」

「周りは見た上で、想っている、憧れているだけなら自由かなと」


 驚きはしたものの、そういえば彼女は男性嫌いだった。
 この人に男性への憧れを問うたところで、そんなもの存在するわけもなかったのだ。

 でも、佐々木さんも絶対に渋谷さんのことが気になっていると思うんだよな。

 そう思いながら佐々木さんを盗み見るが、彼女はいつもと変わらぬ無表情でアジフライ定食を口に運んでいる。

 きっと私が「渋谷さんのこと好きですよね?」と問い詰めても、彼女は決して認めないだろうけれど。
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