偽王子と、甘い偽恋
────Side 千早 臣


『俺は会社なんか継がないし、政略結婚なんかしない』


 そう宣言して父親に殴られ、二年が経った。

 当時、急に家を飛び出して行く当てもなかった俺は、顔のおかげで適当な女に拾われ、そのまま住み着いた。そんな俺にあるのは、仕事と、多少の金だけだった。

 大学時代、アルバイトをしていた先の店長に「女性客が減るのは困るから、うちで就職してくれ」と土下座され、勝手に就職を決めた。

 うちの父親は大手電機メーカーグループの総帥で、俺に会社を継がせる気満々だった。だけど、そんな敷かれたレールを走る気もない俺は、わざと勝手に何もかもを決め、好き勝手やった。その結果、殴られて家を飛び出した。

 言ってしまえば、ガキだったと思う。でも、これしかやり方はなかった。そうしないと政略結婚もさせられ、会社のために働くだけの駒になっていたはずだから。

 ふらふらと家を決めないまま、顔に釣られる女の家に住み込み、そうやって俺は生を繋いだ。何の責任も持たず、楽だったと思う。

 それから二年間、自堕落に過ごし、養ってくれた女に暴言を吐き、殴られた俺に近寄ってきたのが、りりかだった。

 その時は、また顔に釣られてやってきたカモだと思った。
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