偽王子と、甘い偽恋
 着いていった先の女の家は、意外にも面白いものだった。

 俺の二つ下の二十二歳のくせして、恋愛経験もなく、運命の王子様を待っている…、いや、運命の王子様に出会うために肉食動物のように食いついて、お姫様に憧れる、夢見る世間知らずの女だった。

 暇つぶしにはちょうどよく、少し遊んでやろうと思っていた。
 飽きたらすぐに、ここを出ていくつもりだった──。

 それなのに、りりかとの生活は予想に反して楽しかった。

 飾ることのない自然体の彼女は、カフェで客として通っていた時のしおらしい姿よりもずっと愛らしかった。意外と家庭的で、笑顔が眩しくて、反応がいちいち初心で。恥ずかしがる顔すら、すべてが愛おしく感じてしまう瞬間があった。

 それでも、自分から彼女に手を出すつもりはなかった。綺麗で純粋な彼女を俺が汚せば、後々面倒なことになると分かっていたからだ。

 これ以上、情が湧いたら離れがたくなる。

 俺は彼女が望むような男にはなれないし、ましてや愛だの恋だのなんて信じていなかった。学生時代、恋人がいるような女たちが、反吐が出るほど俺の見た目と金に釣られて寄ってくるのを嫌というほど見てきた。

 そんな汚い恋愛ばかりを見てきたのに、りりかは呆れるほど純粋で、真っ直ぐで綺麗なままだった。

 俺には、似合わない。そう思ってブレーキをかけていたのに。

 デートの終わり、酔って気分が良さそうに俺の前で目を瞑り、無防備な姿を晒された瞬間、自分の中の箍が外れた。
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