偽王子と、甘い偽恋
『現在、ご結婚の予定もあるのではないかとのお話も伺っておりますが、その辺りに関して、事実関係はどうなっていますか?』


 そんな記者の問いかけに、思わずテレビを消したくなった。
 もうこれ以上、こんな記者会見を見ていたくない。
 そう思い、リモコンに手を伸ばした、その時だった。


『いえ、そのような事実は一切ございません。ですが…』


 そこで臣くんの言葉が止まる。

 結婚の事実を否定した言葉に、隣に座る臣くんの父親が、僅かに目を見開くのが見えた。

 きっと、裏ではそういう話が進んでいたのだと思う。
 それなのに、臣くんは多くの記者の前で、その事実を明確に否定した。


『…大事にしたい人がいます。今まで、何事にも向き合ってこなかった僕ですが、その方とは、今後そういうことも含め、真摯に向き合って話したいと思っています』


 大事にしたい人…?
 そんな言葉を聞いて、今度はテレビから目が離せなくなった。

 テレビの中が激しくざわついている。

 予想外の展開だったのか、周囲は騒然としており、臣くん一人だけが落ち着き払っている。それはどこか異様な光景だった。

 大事な人なんて曖昧な言葉なのに、淡い期待を抱かずにはいられない。
 その相手が私であってほしいだなんて、思ってしまってもいいのだろうか。
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