初恋が始まるとき。
「…優菜」

「ん…、な、に?」

「すげぇ好き」


 散々人から余裕を奪っておいてこの感覚で言うなんてずるい。予想外のタイミングでの言葉に目を見開いて、その後にぎゅうっとナカを締め付けるのが自分でもわかった。

 渋谷さんは耐える様な声を出し、私の手を握る力を強くした。


「…っ、締まって…っ、やば…」


 この人の反応に気を向ける余裕はなかったけれどその一瞬がすごく、よさそうで安心したのを覚えている。私だけじゃない、似た感覚を共有し合えている。


「…好き、って言われて反応した?」


 そう問いながら私の下腹部を親指で少しだけグッと押す。そのせいでまた奥が少し震えるのを感じて、強い快感に思わず肩を強めに叩いた。


「いた…っ」

「余計な事…、いうな…っ…!」

「ごめんって」


 頬に口付けながら楽しそうに笑って、手から手を離すと私の方に体重をかけて今度は繋いでいたその手で私の髪を優しく撫でる。動かず繋がっているだけでも深く満たされていくのを感じる。

 前までは触れてほしくなんかなかったのに、今は触れていてほしい。
 離れたくないし、離れて欲しくない。

 こんなに柔らかくて甘い恋の存在をずっと知らなかった。
 教えてくれたのは嫌いな先輩。


「…すき」


 思わず零れたその言葉を渋谷さんは聞いていたのか、私の顔を見ることはなかったけれど、抱きしめる力が更に強くなった気がした。

 きっと私の顔を見なかったのは、意外と照れ屋だからそんな顔を見られたくなかったのだと思う。
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