初恋が始まるとき。
Epilogue
 想いが通じあった私達は、あれから甘く溶ける様な日々を…。


 なんてことは当然ない。
 人が仕事している所に後ろから人の頭に顎を載せている邪魔な人間。
 言うまでもない、相手は瑛都だ。

 私達が交際していることは思わぬ人物によってバレた。
 仕事が始まって数日後に本田さんが笑顔で寄ってきては「交際おめでとうございます~!」と特大メガホンで叫んだような声量で祝ってきた。

 周りは唖然、私も目を見開く以外に何も出来なかったが、ひとまず咎めるべきは本田さんではなく、勝手に話しやがった瑛都だと思い、ドン・キホーテでハリセンをわざわざ購入し思い切り頭をどついた。

 それから隠す必要がなくなり、会社でこのようにべたべたと甘えてきている。


「渋谷さん」

「…」

「渋谷さん?」

「…」


 名前を呼んでもシカトされる。
 今なら好き勝手言ってもいいのでは。


「おい」

「…」

「顔面詐欺王子」

「…それ本田さんでしょ」

「そこ反応するなら最初からしろや。顔面だけ良い自覚あって嫌だし、何か」


 そう話しながらも指を動かし続け、精算処理を続ける。


「ここ会社なんです。恋人と言えど、公私混同はしたくないですし、おまけに目立つのは嫌いです。わかってますよね」

「わかる、わかるけどさ!そこまで敬語とか、渋谷さん呼びとか徹底しなくてよくね!?」

「何もわかってねぇじゃねぇか」


 人の話聞いてた?というくらい、本当に人の言葉に対しての返事が返って来ない。他人に接するみたいなこの冷たい態度が絶えられなくなってしまったらしく、瑛都はここでめそめそと駄々を捏ねている。

 なんて面倒な成人男性なんだ。というか私何でこの人と付き合ったんだろう、全くタイプじゃない。と頭の中で考え続けている。
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