初恋が始まるとき。
「今日金曜日だね」

「ですね」

「泊まりくる?てか住む?」

「住みません。流れる様に聞いてくんな、危ない」


 うっかりはいって本気で間違えそうな流れやめてほしい。

 あれから週末は決まって渋谷さんの家で過ごすことが増え、うちの両親はいい加減察し始めている。母は優しい表情で私を見て、父はにやにやと口元を緩め腹の立つ顔をしている。うちの兄は何かで会った時には複雑そうな表情をしていた。

 理由は瑛都がうちの兄に「本当に未来の義弟になっちゃうかも!俺!」と元気よく発言していたことにある。それから兄が何だか複雑そうな顔をしていて、何で付き合ったんだよみたいな目で見られる。理不尽。

 そんな感じでいろいろとありながらも今も瑛都とは上手く交際している。ただ、交際したてにしてはドライすぎるとは言われるけれど、そもそもいい年した大人が恋愛が成就したくらいで会社で浮かれるものではないだろうと思う。


「…瑛都、ちゃんと仕事終わり行くからいつも通りにして」


 そう小さな声で呟くと、犬の尻尾と耳が見えそうな程嬉しそうな反応をし、ピンッと背筋を伸ばしていた。


「まじ?絶対?」

「しつこい、ハウス」

「ええ、犬扱い?」


 そう言いながらも笑っている瑛都を無視し、精算書類を渡す。

 本当に交際してからはさらに毎日騒がしい。
 だるいと思ってしまう自分がいるのに、これを嫌じゃないと思ってしまっている自分もいることに、最近の私は気付いている。

 こんな事を言ったら調子に乗るから絶対口には出さないけれど。
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