初恋が始まるとき。
「てか、そもそも避けるのが意識してるからって思わないわけ?」

「…もう関わりたくないだけです。振り回されるのもうんざりなんです」

「どうでもいい人間に振り回されんの?」


 この人と話していると嫌になる。

 絶対にそんなことはないのに、だんだん追い込まれて本当に私がこの人に引き込まれているんじゃないかなんてそんな錯覚を起こしそうになる。

 首を横に振り渋谷さんの手を払おうとすると、その手を掴まれ引き寄せられ顔の距離がグンッと近くなり、お互いに見つめ合う。渋谷さんはいつもの表情でこちらを見ていた。

 慌てて離れようとしてもそのまま手を引き寄せられ、距離を離す事を許されない。


「…離してください」

「案外時間の問題なんじゃない?俺の事を好きになるの」

「なりませんから」


 そう言い放ってようやく手を振り払い、自分の飲み物に口付ける。

 こんな男の言葉に真剣に考えたらはまっていくだけだ。
 もう何も考えるべきではない。

 楽しそうな渋谷さんに反し、私は段々とイライラしていく。
 それはもはや渋谷さんの行動や言動にでは無くて、振り回されてばかりの自分にだ。

 さっきからそんなわけないと意地を張って言い訳ばかりしている様な感覚にずっと気持ちが悪くて、だからと言って渋谷さんが気になって仕方がないと言う事を認めたくはなかった。
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