初恋が始まるとき。
「…ていうか、何で抜けたんですか?幹事なのに」

「俺のお目当ての子が悲しそうな顔してるから?」


 確かに呼んだのはこの人だったけど"お目当て"なんて言い方に思わず咳き込んだ。

 この人は相変わらずどこまで本気でどこからが冗談なのかがわかりにくい。

 渋谷さんを見ると私の顔を見て満足そうに笑っている。
 それを見て揶揄っているだけだとようやく理解して呆れた。

 この男が私なんかに本気になるはずがない。
 考えるだけ時間の無駄だった。

 それに気付いて溜息を吐き、渋谷さんのいない方向を向くと強引に渋谷さんの方に顔を向けさせられる。


「あんなくだんねぇ男の言葉に振り回されんなよ」

「別に気にしてませんから」

「嘘吐け」

「本当です!」

「じゃあ何であんな顔してたわけ」

「騙されてきた合コンで貶されたのが不愉快極まりないだけです」

「言ってやればよかったのに。お前の話がおもんないからボーっとしたって。俺の時なら気強く言い返すだろ」

「あの人と渋谷さんは違います!」

「何が違うって?」

「付き合いの長さも関係性も何もかも違うじゃないですか!」


 何でこんな言い合いを隣を歩きながら渋谷さんとしなければならないのか全くわからない。私もほどほどに流せばいいのに気付いたら乗っかる様にこの人との言い合いをしてしまっている。
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