初恋が始まるとき。
「大体、らしくねぇんだよ。どうでもいい男の顔を見て傷付いた顔をしてる優菜ちゃんなんか」

「だから、そんなのしてないです」

「顔に出てんの」


 自分では出してるつもりはなかった。
 実際誰も気付かなかった。

 誰も自分の事で精一杯で私が言われた事、それに対してどう感じたかなんてどうでもよかったから。

 そのはずなのにこの人は私の事を見て外に連れ出した。

 いろいろと考え事をしていると「それともまだあそこにいたかった?」なんて問い掛けられ、何も言わず黙って首を横に振った。

 そんな私の反応にふっと笑い、手をつないだまま駅に向かう。

 時刻はまだ20時過ぎ、このまま帰してもらえるなんて思っていなかったけれど以外にも渋谷さんは私を送り届けてくれた。


「…わざわざありがとうございました」

「いいえ。女の子1人で帰らすの危ないし」


 渋谷さんと向かい合うも、なんだか気まずくて渋谷さんの顔が見られない。

 嫌いだと、関わりたくないと、ずっと思っていたはずなのに、今日だけは少しこの人が居てよかったかもなんて思った。


(ん?)


 そこまで考えて違和感に気付いた。

 そもそもこの人がここに騙して呼ばなければこんな思いしなくて済んだのでは、なんてことを思い、全ての元凶はこの男だったことを思い出した。

 軽蔑の目を向けていると渋谷さんは首を傾げてこちらを見ていた。
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