初恋が始まるとき。
「あまりにも誘われるから1回くらいと思って…。しつこかったし…」

「本当バカ!遊び人はそうやって懐に入り込んでくるのよ!1回流されたら終わりなんだから!」


 結愛さんの迫力に私も紬さんもビクッと体を揺らし、結愛さんを見る。

 
「あ、そっか…」


 紬さんが何かを察して呟いたことに首を傾げると、紬さんは苦笑いしていた。


「星凪さん、そういうタイプの人だった」

「ええ~!結愛さんも騙された口!?」

「だまらっしゃい!」


 経験者は語る、のタイプだったかとため息を吐く。

 そうなるとなぜ結愛さんはそんなタイプの男性を受け入れたのか気になった。

 結愛さんの方を見るとアイスコーヒーを両手で持ちながら首を傾げている。


「…なんで騙されたの?」

「言い方」

「さーせん、姉御」


 私の謝罪を聞くと結愛さんは溜息を吐いた後、そのままグラスをコースターの上に置いて、頬杖をついて窓の外を見ていた。

 そんな姿だけでも様になる美人な結愛さんに女の私でも目を引かれる。


「私も最初は星凪のこと、嫌いだったよ。でも…、他の女に取られるのがムカつくなって。あれだけ私を落とそうと必死になってきて、こっちは不服にも振り回されたわけだし、責任を取らせてやりたかったのよ」


 言葉としてはあまり穏やかではないかもしれないけれど、そう話す結愛さんの表情があまりにも幸せそうで、優しくて、声からも溢れ出ている愛情に、理屈では説明できないものを感じた。

 嫌いだったのに好きになることなんて存在するのかわからない。

 そんなに長く生きているわけではないけれど、今の私は嫌いなものはずっと嫌いだ。
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