初恋が始まるとき。
「まあ、渋谷がどんな男か私もよくわからないけど、せっかく行くって決めたんだから楽しもうとはしてみたら?案外楽しいかもしれないじゃない」

「だからと言って、別に服とか新しくしなくても…。気合い入れてるみたいで恥ずかしいし」

「オシャレを別に男の為にしなくていいじゃない?」

「というと?」


 デートでおしゃれをするのは、その男性に可愛いと思われたい、好意的に見られたい、1つのアピールだと勝手に思い込んでいた。

 オシャレがその男性の為じゃないと言う考えが、私にはパッと浮かばなくて首を傾げていると、紬さんも同じくわからないと言う風に首を傾げていた。

 結愛さんはアイスコーヒーを再度両手でつかみクスッと笑っている。


「渋谷とのデートが憂鬱に感じてたとしても、おしゃれすると気分が上がると思うのよね。おしゃれって自分が最強になれる気がするし、渋谷がなんか言ってきたら『あんたの為じゃないから自惚れんな』って言ってやればいいわよ」


 そう笑う結愛さんに思わず笑いが零れる。

 確かに買い物をしている時だってそれを着る自分、それを身に着ける自分を想像してわくわくして、そのおしゃれが自分にぴったりはまると嬉しいし、不思議と自信になる。

 それを身に着けて出掛けるという行為が何か特別な物に感じて、わくわくするのは理解が出来た。

 渋谷さんとのデートという事実にずっと気を取られ、気が重くなっていたけれど相手が渋谷さんだからとは言えそこまで深く考える必要も…。

 そう考えていると「ただし」と結愛さんは言葉を続け険しい顔をしてこちらを見た。


「連れ帰りと送り狼には気を付けなさいね」


 ああ、これも経験談か。

 察さなくていい事実だったかもしれないが、なんとなく直感でそう思い、紬さんと2人で苦笑いした。
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